Internet Public Library Asiaの構築 −公共図書館サービスの視点に基づく日・中・韓3ヵ国語によるサブジェクトゲートウェイ

Won淑, 永森光晴, 阪口哲男, 杉本重雄, 田畑孝一
図書館情報大学
〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2
E-mail: { wonsook, nagamori, saka, sugimoto, tabata}@ulis.ac.jp

概要

 本研究では, はじめにインターネットの普及による伝統的な公共図書館のサー ビスの変化を幾つかの例を通して調査した結果, アジア地域で発信される優れた 情報資源をアジアの言語で紹介することの重要性に気づいた. そこで, 本研究で は, 日・中・韓3ヵ国語のいずれかで表された資料で, かつ公共図書館の視点か ら有用であると認められる資料をウェブから収集し, それぞれについての紹介を この3ヵ国語と英語で行うInternet Public Library Asiaの構築を進めた. 本シ ステムで使うメタデータスキーマはDC(Dublin Core Metadata Element Set)[1] とIMS(Institutional Management System)[2]を基に作成し, 多言語メタデータ は日・中・韓を母国語とする作成者による協調作業で作成する. また, ここでは メタデータだけではなく, 利用者が母国語を用いて検索できるようにユーザイン タフェースも多言語で提供している. メタデータの記述にはXMLを用い, 記述し たメタデータはPostgreSQLを用いてデータベース化した. 多言語ユーザインタフェ ースの実現にはXSLT等の技術を利用している.

キーワード

Internet Public Library Asia, 多言語メタデータ, 多言語サブジェクトゲート ウェイ, 協調作業

Construction of Internet Public Library Asia -Subject gateway by Japanese, Korean, and Chinese, from the viewpoint of public library service

Lee Wonsook, Mitsuharu Nagamori, Tetsuo Sakaguchi, Shigeo Sugimoto, Koichi Tabata
University of Library and Information Science
1-2, Kasuga, Tsukuba, Ibaraki, 305-8550, Japan
E-mail: {wonsook, nagamori, saka, sugimoto, tabata}@ulis.ac.jp

Abstract

First of all, changes in the services provided by the traditional public library due to the spread of the Internet were investigated, and it was defined that it was important to introduce good quality Asian resources by Asian languages. As a result, the Internet Public Library Asia which collects Japanese, Chinese, and Korean web resources that are recognized as being useful from viewpoint of public library and introduces them in these three languages in addition to English has been created.

In this study, metadata schema based on the Dublin Core Metadata Element Set and IMS (Institutional Management System) were created.

For this study, Japanese, Chinese, and Korean metadata implementors cooperated to create multilingual metadata based on the above metadata schema.

The metadata were described using XML and deposited into a database using PostgreSQL. In addition, this study researches multilingual user interfaces which can perform searches independent of the user's language. Technologies such as XSLT were utilized to create the multilingual user interface.

Keywords

Internet Public Library Asia, Multilingual metadata, Multilingual subject gateway, Cooperative working

1. はじめに

 Internet Public Library(以下IPL)[3]は, 1995年ミシガン大学School of Information(SI)での授業から始められた試みで, インターネット上に公共図書 館を実現させるために構築されたものである. 現在まで200名以上の学生達がIPL の構築及び様々なサービスに参加してき, 世界各国から数十人のボランティア司 書たちもIPLの「Ask a Question Service」でレファレンス質問に答えてくれて いる. 2002年2月現在で, IPLには約40,000 件の情報資源や参考サービスに関す るデータが収録されている.

 これまでミシガン大学のSchool of Informationや図書館と本学の間で共同研究 が行ってきたことから, 昨年度より本学附属図書館においてIPLのミラーサイト [4]を稼動させている. このような背景から, 現在インターネット上の公共図書 館に関する研究を行っている[5].そのような研究に関連して, 本研究ではアジア におけるインターネット上の情報資源を対象とした公共図書館向けサブジェクト ゲートウェイを日・中・韓3ヶ国語によって試作することを目的とする. 本研究 ではこのシステムをInternet Public Library-Asia(以下IPL-Asia)と呼ぶことに した.

 本稿では, はじめにインターネットの普及による伝統的な公共図書館のサービス の変化を幾つかの例を通して調査した結果を報告し, IPL‐Asiaにおける多言語 メタデータやその作成方法, メタデータ記述規則, そしてIPL‐Asia を構成す るためのツール及び実例について述べる.

2. 公共図書館とインターネット

2.1 インターネットの普及による公共図書館サービスの変化

 世界最初の公共(公立)図書館のウェブページはフィンランドのヘルシンキ市 立図書館であると言われており, インディアナ州のセントジョセフ公立図書館が 1994年3月14日にアメリカの公立図書館として初めてウェブページを立ち上げた. アメリカの公共図書館がいつごろからインターネットを導入したかは明確にされ てないが, L.リウが「インターネット, 図書館, 情報サービス」という本で1994 年から図書館とインターネットに関する文献が爆発的に増加したと述べているこ とから, この頃から図書館でのインターネット接続が一般的になったのではない かと推測できる[6].

 日本の場合も公共図書館でのインターネット導入時期は明確にされてないが, 平成11年, 文部省生涯学習局学習情報課で行った全国公共図書館のコンピュータ 利用調査[7]によると, 全国公共図書館のうち, ホームページを開設し インター ネット上で公開している館が都道府県立66.7%,市(区)立26.1%,町村立13.2%であ り, インターネットコンピュータを利用者に開放している図書館は図書館全体の 7.8%となっている. これは平成10年[8]のホームページを開設しインターネット 上で公開している館が都道府県立45.0%, 市(区)立14.8%,町村立6.2%で, インター ネットコンピュータを利用者に開放している図書館は図書館全体の3.5%である事 に比べると随分多くなっている事が分かる. このような数字の変化から, 近年に なって公共図書館でのインターネット利用が急速に広がっているという事が推測 できる.

 韓国でのインターネット普及率は, 31.2%で, この3年間に20ポイント増加して いる. 家庭のパソコンを使用しているインターネットユーザのうち51.6%がDSL回 線を利用している. さらには, インターネットマンションなどでの専用線は 11.9%, CATVインターネットは7.5%で, 高速情報通信インフラへの指向性が高い と発表している.しかし, 公共図書館でのインターネット普及率はとても低く, 韓国図書館協会の統計によると公共図書館381館のうち, マルチメディアコンピュ ータ室を備えている図書館は172館で45.1%に過ぎない. また, 総コンピュータ数 は685台で1館あたり平均4台ほどである. 2000年12月に「図書館情報化政策」が発 表され, 2002年まで3千68億ウォンをかけて図書館情報化のためのディジタル環 境作りに力を注いでいる[9].

 このような変化に伴い, 最近公共図書館では従来の伝統的なサービスに加えて インターネット向けサービスを導入し, 一層多様なサービスを提供している. 公 共図書館でインターネットを用いて行っているサービスは, 大きく「図書館ホー ムページの立ち上げ」,「インターネットレファレンスサービス」, 「電子化サー ビス」などがある. 以下ではこれらのサービスについて例を挙げながら簡単に説 明する.

2.1.1 図書館ホームページの立ち上げ

自館のホームページを立ち上げ, そのホームページを通して様々なサービスを行 う試みで, 現在の公共図書館で一番盛んに行われているサービスである. このよ うなホームページを通して提供する情報は,「自館の利用案内・広報」,「自館で 作成する情報データベース」,「図書館が外部から導入した情報」,「その他の情 報」,「外部のネットワーク情報資源に対するリンク」[10]などがある.

2.1.2 インターネットレファレンスサービス

図書館のホームページが一般化されるにつれ, ホームページを用いた公共図書館 でのレファレンスサービスが盛んになり, 最近ではその方法も多様になっている. 現在ウェブ上で行っている一般的なインターネットレファレンスサービスは, 「電子メールレファレンスサービス」,「ウェブベース図書館自律学習」,「ウェ ブベースレファレンス情報源構築」,「インターネット基盤レファレンスサービ スの相互協力と分担」などが挙げられる.

2.1.3 電子化サービス

 ここ数年, 大学の図書館を中心としていくつかの電子化プロジェクトが実施さ れてきたが, 公共図書館においても徐々に所蔵資料の電子化が行なわれようになっ てきた. 特に自館が所有している貴重資料に対する電子化が盛んになり, その電 子化される資料の種類も絵図, 絵巻物, 双六, 錦絵, 版画, 古文書等で様々であ る.

2.2 インターネット上での公共図書館機能の実現の取り組み

 現代, ウェブ上で利用可能な情報資源は増えつつあるが, その反面, 優れた情 報資源を効率よく探し出すことは段々難しくなっている. このような現状の対案 として世界の各地でインターネット上での公共図書館の実現への取り組みがなさ れている. ここでは, その例としてアメリカのInternet Public Libraryと韓国 のInternet Public Library Koreaについて簡単に紹介する.

2.2.1 ミシガン大学のInternet Public Library (アメリカ)[3]

 Internet Public Library はアメリカのミシガン大学(the School of Information at the University of Michigan)で1995年から始められたプロジェ クトであり, インターネット上にある最初の公共図書館である. このIPLプロジェ クトは, 一般市民に公共的なサービスを提供する事と同時に, 学生らにディジタ ル時代の司書の役割について学ぶようにする事を目的としている. これまで約4 万件のウェブ資料に対するメタデータを作成し, 利用者の利用を図っている.

 サービス内容は,「レファレンスサービス ( Reference )」,「 展示会 ( Exhibits )」,「 司書のためのページ (Especially for Librarians )」, 「 シリアル ( Magazines and Serials ) 」,「新聞 ( Newspapers ) 」,「オ ンラインテキスト ( Online Texts )」,「 ウェブサーチエンジン ( Web Searching )」,「 児童 ( Youth )」,「 青少年 ( Teen )」である.

2.2.2 成均館大学のInternet Public Library Korea (韓国)[11]

韓国の成均館大学で作られたもので, 2000年9月からサービスを開始した. ミシ ガン大学のInternet Public Libraryと同様に, 一般市民への良質の情報提供サー ビスのためだけではなく, インターネット公共図書館を実際にデザイン・構築す る過程から現れる問題などについて学び, 経験を蓄積していくことも目的として 作られた.サービス内容は「児童」, 「青少年」, 「女性」,「オンライン作品」, 「展 示会」である.

2.3 多言語資源へのアクセス支援

 公共図書館の蔵書と同様にウェブ上には様々な言語で書かれた多くの多言語情 報資源がある. その内容は, 学習用の情報資源から余暇時間を楽しめる娯楽情報 資源まで, とても多様である. しかし, たいていの利用者は外国語の入力が不可 能な環境にいる場合が多く, また, 外国語に対する知識がない場合がほとんどで ある. そのため, 多くの多言語情報資源は, 利用されにくい状況である.

そこで本研究では、このような多言語情報資源にアクセスするための支援ツール が強く求められていると考え, 多言語メタデータと多言語ユーザインタフェー スの機能を持つIPL-Asiaを提案し, 実現を進めた.

 本研究では, 一つの情報資源に対するメタデータを多言語で作成し, 利用者に 多言語ユーザインタフェースと共に提供することにより利用者は外国語を入力で きない環境でもその外国語に書かれた情報資源の検索が可能になり, また, 外国 語に対する知識がない場合でもその国の資料現況把握が可能になる. こうした観 点からIPL-Asiaでは,多言語によるメタデータ作成を進めた.

 次に, IPL-Asiaを実現するために行った作業やIPL-Asiaの特徴等について説明 する.

3. Internet Public Library

3.1情報資源選定方法と基準

 インターネットでは誰もが情報の提供者になることができる. また安い費用 で膨大なデータベースの情報資源を利用できる機会を与えている. しかし一方 では,質的に統制されないウェブ資源の増加のため, 多くの利用者は戸惑いを感 じている. 印刷資料においても低質の出版物が数多く出版され, これに対する問 題が深刻になっていることが現状であるが, 公共図書館がフィルタの役割を果た している. すなわち, 伝統的な公共図書館は自館なりの図書選択基準を用い,選 書をおこなっているため, 良質の資料による利用者サービが可能である. しかし, ウェブ資料に対する具体的な基準を用いて資料を選定し, 利用者に提供している サービスはそれほど多くない.

 良質のウェブ資料を利用者に提供するためには, まず資料選定基準を明確に定 める必要がある. これまで, ウェブ資料を評価するための多様な評価要素と方法 等を提示した研究が多く行われてきた.

 ウェブ資料を評価したほとんどの研究において用いられている方法は「評価基 準の選定を通した評価方法」であり, これは厳選された評価基準を利用してウェ ブ情報資源の品質を評価する方法である. これ以外の方法としてはウェブサイト を利用者がどれだけ訪問・利用しているのかに対するデータを収集・分析・評価 するためのソフトを利用する「自動化評価方法」, 特定の主題の概念的な構造が 明確になっているかを評価するために使われる「概念マッピング」,「オンライ ンサーベイ方法」等がある[12].

 本研究では, この方法の中から「評価基準の選定を通した評価方法」を用い, 良 質のウェブ資料の選定を行った. 以下にIPL-Asiaで使用する「資料選定基準」につ いて述べる.

3.1.1 情報資源選定基準

 内容と公共性などの側面から見て, インターネット公共図書館の性格に適合で あると考えられる情報資源の中から「接近性」, 「有用性」, 「信頼性」, 「最新性」の 面から評価し, 資料選定基準を定めた.

表1 情報資源選定基準
Table 1

3.2 メタデータスキーマ

 本研究では, 多言語メタデータを記述するためにいくつかのメタデータの調査 を行い, Dublin Core Metadata Element Setと IMS ( Institutional Management System )を基にメタデータスキーマを作成し, 必須エレメントと選 択エレメントに分類した. 以下は, 本システムで使用する17エレメントである.

表2 メタデータスキーマ
Table 2

3.3 多言語メタデータ

 インターネット情報資源の重要性を認知して, 早くからアメリカのLC ( Library of Congress ), OCLC ( Online Computer Library Center ), IFLA ( International Federation of Library Associations and Institutions )の ような目録関連機関では, ウェブ情報資源の記述に対するメタデータ作成の試み が行われて来た. 最近ではアメリカだけではなく, 世界各地でメタデータの研 究が盛んになっている.

 ウェブ情報資源は同じURLを持っていても時間が経つにつれその内容が変わっ たり, 削除されたりするので, ウェブ情報資源の記述, いわばメタデータの役割 は重要であると言える. メタデータは現在利用できる情報資源の発見だけではな く, 過去にどのような情報資源が存在していたのかを習得する事にも役に立つの で, 特に現代のように情報の安全性が低い時代にはもっとも必要とされると考え られる.

 メタデータは,普通一つの言語で記述されているが, IPL-Asiaでは多言語情報 資源の発見を支援するために一つのメタデータレコードを日本語, 中国語, 韓国 語, 英語で記述する, いわゆる多言語メタデータを用いる.

 一つの情報資源に対するメタデータを日・中・韓・英で作成し, 利用者に提供 することによって利用者は外国語を入力できない環境でもその外国語に書かれた 情報資源の検索が可能になり, その外国語に対する知識がない場合でもその国の 資料現況把握が可能になる. もちろん, 外国語で書かれた資料を要求する利用者 にその国の言葉を知らなくても多言語で書かれたメタデータを利用し, 利用者の 要求を満たすことが可能になる.

3.4分類スキーム

 IPL-Asiaでは, ブラウジング検索と検索語による検索機能を提供している. こ のブラウジングに使われるカテゴリを分けるために何らかの分類スキームが必要 となり, いくつかの分類を比較・調査した上でIPL-Asia用の分類スキームを定め た.

 伝統的な公共図書館の利用者層を考え, すべての利用者がアクセスしやすくす るためのクラスを構築するために, 大分類は一般, 青少年, 児童とし, そのサブ クラスを語順にした. 以下に語順による分類を紹介する.

表3 語順による分類
Table 3

3.5 Internet Public Library Asiaのサービス

 ウェブ上で公共図書館の機能を果たすIPL-Asiaは伝統的な公共図書館の特徴と ウェブサイトの特徴を両方持っている.伝統的な公共図書館の特徴としては, IPL-Asiaでは公共図書館のように利用者層を「一般」,「児童」,「青少年」に想 定し, 情報資源選定基準に従って厳選した情報資源のみを利用者に提供する. 様 々な利用者は関心分野や主題にアクセスする方法などが異なると考えられるため, 使用者グループの特性化を行い, グループに合わせたサービスを提供する.

 ウェブサイトの特徴として挙げられることは, 多様な検索方法の提供で,「主 題別のブラウジング」,「検索語による検索サービス」などが提供され, 利用者 は自分にとってアクセスしやすい方法を利用して情報検索することができる.

 これらのサービスに加えて, IPL-Asiaでは多言語メタデータや多言語サブジェ クトゲートウェイを提供することによって多言語情報資源へのアクセスを援助し, 国内の公共図書館が独自に電子化して持っているコンテンツを対象とし, 多言語 メタデータを作成, 提供している.

4. Internet Public Library Asiaの実現

4.1 多言語メタデータ

4.1.1 多言語メタデータの協調作成作業

 一つの情報資源に対して複数の言語でメタデータを作成する. しかし, 一人の メタデータ作成者が日・中・韓・英すべてのメタデータを記述するのは難しいた め, IPL-Asiaでは日本語, 中国語, 韓国語をそれぞれ母国語として使っている複 数のメタデータ作成者の協調作業によってメタデータを作成する. その時メタデー タ作成者間の共通語としては日本語を用いる. 以下はIPL-Asiaにおけるメタデー タ作成の手順である.

(1) よい情報資源を多く紹介しているウェブページ(以下情報資源のための情報 資源)を 収集して, 全てのメタデータ作成者が参考できるようにして置く.

(2) 情報資源の収集を行う.:情報資源のための情報資源を用い, 母国語の資料 を収集する.

(3) (2)を行った人が自分の母国語+日本語でメタデータを作成し, データベー スに登録する.

(4) データベースの管理者は次のメタデータ作成者が作業しやすくするために登 録されたメタデータに例えば「中国語が入っていない」とか「日本語が完全では ない」のように印をつける.

(5) (2), (3)を行った作成者以外のメタデータ作成者が(3)の未完成のメタデー タを完成させ, 再びメタデータのデータベースに登録する.

例えば韓国語を母国語として使っているメタデータ作成者が韓国語の情報資源を 収集して, 韓国語と日本語のメタデータを作成し, データベースに登録しておく. すると, 後で中国語を母国語にするメタデータ作成者が先のメタデータに中国語 を追加し, 再びデータベースに登録する. すると後で英語を母国語にしているメ タデータ作成者が英語を追加してデータベースに登録する[13].

Figure 1
図1 多言語メタデータ作成方法

4.1.2 XMLによるメタデータの表現

 各メタデータはXML形式に記述され, XSLスタイルシートを用い, ウェブ上に表 示される. 次の図2は, このような過程を経て得られたHTMLのファイルで, ある 韓国の情報資源に対する4ヵ国語で記述された多言語メタデータである.

Figure 2
図2 多言語メタデータの表現

4.2 多言語ユーザインタフェース

 ユーザインタフェースはメタデータと同様に日・中・韓・英によって構築し, ページのシンプル性などを考慮して最初の画面以外は言語毎に独立させることに した. しかし, 今後, 利用の便利さなどの角度から検討もして, 一番便利で, 効 率の良いユーザインタフェースを用いることが望ましい. 以下に本システムで使 用する多言語ユーザインタフェースについて紹介する.

Figure 3
図3 IPL-Asiaの最初の画面

Figure 4
図4 IPL-Asiaの日本語の最初の画面

 図3はIPL-Asiaの最初のページで, ここでは日本語, 韓国語, 中国語, 英語の4 ヵ国語と国旗で各ページにアクセスできるようになっている. この画面で利用者 は, 自分が得意とする言語で記述されたユーザインタフェースに入ることができ る. すなわち, この画面は各言語のユーザインタフェースへの入口で, 図4がこ の画面から入った日本語の最初の画面である. ここでは, カテゴリ毎の説明を利 用者層を考慮して記述し, 各コレクション及び利用案内やFAQ等へのリンクを張っ ている.

Figure 5
図5 児童の画面

Figure 6
図6 検索結果の画面

 図5は, 児童向けの情報資源へのサブジェクトゲートウェイで, 本格的な検索 が行える画面である. まず, 検索に用いる言語と検索結果として求める情報資源 の種類(どの言語で記述されている情報資源)を選択し, 検索語を入力して検索を 行う. ブラウジングによる検索もでき, 分類は他のページと同じように語順によ るものになっているが, 子供に最も親しみやすい分類を用いることが望ましい. この画面で検索語を日本語に, 検索結果として求める情報資源を日本語・中国語・韓国語 に選択したら, 図6のように日・中・韓の情報資源がすべて日本語によっ て紹介される検索結果を得ることができる. 利用者はここから, その情報資源に 直接アクセスすることも可能であり, その情報資源に関するメタデータを閲覧す ることも可能である.

 下の図7は, ある韓国語の情報資源に対する日・中・韓・英のメタデータで, 図8は, その多言語メタデータから日本語のみを選択した画面である.

Figure 7
図7 多言語メタデータの検索結果画面

Figure 8
図8 日本語のみメタデータ検索結果画面

4.3 メタデータデータベースの構成

 既存のリレーショナルDBの利用やXML文書の構造をそのまま格納できるデータ ベースの利用なども検討したが, 多言語への対応や開発プラットフォームの問題 から, 現在はJavaとサーブレットを用いて作成したプログラムを利用し, XML形 式で記述したメタデータをPostgreSQLを用いてデータベースに蓄積している.

5. おわりに

 本稿では, IPL-Asiaの概要及び実例を紹介した. メタデータスキーマの検討を 行い, それに従って協調作業を用いた多言語メタデータの作成を実際に行った. また, 多言語ユーザインタフェースのプロトタイプを作成し, 分類スキームや情 報資源選定基準などを定めた.今後は, 多言語メタデータの作成を続けて行い, IPL-Asiaをシステムとして完成させていく予定である.

謝辞

 多くの方に手伝っていただきながら本研究を行いました. 本研究室の先生たち と多言語メタデータ作成者たちに感謝いたします. 特に, 公共図書館の電子化貴 重資料のメタデータを作成していただいた本学の4年生加藤愛子さんと多言語メ タデータ用エディタを作っていただいた趙に誠に感謝します.

参考文献

[1] Dublin Core Metadata Initiative. http://dublincore.org/

[2] Institutional Management System. http://www.imsglobal.org/

[3] Internet Public Library. http://www.ipl.org

[4] IPLのミラーサイト http://ipl.ulis.ac.jp/

[5] 永森 光晴他, Internet Public Library への取り組み ,「ディジタル図書 館」 No. 20 ,2001.

[6] 川崎良孝,高鍬裕樹,図書館・インターネット・知的自由,京都大学図書館情 報学研究 会,2000,207p.

[7] 日本図書館協会情報管理委員会編,公共図書館のコンピュータ利用調査報告書,1999.

[8] 日本図書館協会情報管理委員会編,公共図書館のコンピュータ利用調査報告書,1998.

[9] 孫誌衒,公共図書館におけるインターネットサービス提供状況分析,図書館情 報大学修士論 文,2001,78p

[10] 根本彰,インターネット時代の公共図書館サービス:米国の状況を中心に. 「ネットワーク情報資源の可能性」(論集・図書館情報学研究の歩み第15集),日 本図書館学会研究委員会編,1996,pp51-53.

[11] Internet Public Library Korea http://www.iplkorea.org

[12] ???(Tae-Woo Nam), ???(Hye-Young Rhee),??? ??? ??? ?? ????  ?? ???  ?? ?? (The Study on Quality Evaluation of Web Resources to select excellent Web Resources),????? ???, 2000

[13] 趙強, 多言語メタデータの協調的な作成のための支援機能を持つメタデー タ編集システムのライブラリ, 図書館情報大学修士論文, 2002.