ネットワークにおける情報分析:21世紀におけるInterspace(注1)

Bruce Schatz
NCSA, Beckman Institute, University of Illinois, 405 N. Mathews Ave, Urbana, IL 61801,
phone: +1-217-244-0651, fax: +1-217-244-2909, email: bschatz@ncsa.uiuc.edu
http://www.grainger.uiuc.edu/dli/
(訳:杉本重雄,図書館情報大学)

抄録

 21世紀におけるネットワーク(the Net)は現在とはかなり異なった性質のものとなり, 一般の人々が必要な情報を見つけだすための環境にまで向上しているであろう.これまで の10年間のネットワーク技術の発展によって,ネットワークを利用した情報のブラウジン グが多くの人々に受け入れられ,文書をネットワークから取り寄せることが一般的になっ ている.これからの10年間には,ネットワーク上での情報検索によって多数の文書を見つ けることが一般化し,その結果分散した文書のリポジトリが一般的になるであろう.こう した傾向は連邦政府によるディジタル図書館の研究開発計画の中でも既に広く認められて いる.しかし,2005年の世界に対しての備えを考えると,情報の分析環境に関する大きな 研究開発計画を遂行する必要があると考えられ,またそうした環境を作り上げることによ って情報間相互の関連性を見いだすことが将来においては一般化すると考えられる.

 Interspaceはインターネットの将来像を探るプロジェクトである.そこでは利用者は多 数の情報源からの情報を様々な方法で相互に関連付けることができる.アーキテクチャの 面から考えると,インターネットがデータを送受信するためにネットワークを相互接続す るプロトコルを提供する環境であると考えられるのに対し,Interspaceは情報の空間を相 互に結び付けて作り上げられる情報を扱う応用のための環境であると言える.この環境を 効率良く実現するには,分散オブジェクトに関する計算機科学の研究と意味的検索に関す る情報科学の研究を効果的に統合して新しいオペレーティングシステムを作り上げること が必要であろう.この新しい技術を実現するには,研究室において新しい分析環境の実現 可能性を示し,実際の利用者と環境を対象として新しい情報応用技術の実現可能性を評価 するために基礎的研究,プロトタイプシステムの開発,テストベッドを配置した実際的な 評価のための合衆国政府による研究開発戦略が必要であると考えられる.

キーワード:

情報検索,ディジタル図書館,ネットワーク情報システム,情報分析環境,研究開発政策, Interspace,the Net(注2)

Information Analysis in the Net: The Interspace of the Twenty-First Century

Bruce R. Schatz
University of Illinois
NCSA, Beckman Institute, University of Illinois, 405 N. Mathews Ave, Urbana, IL 61801,
phone: +1-217-244-0651, fax: +1-217-244-2909, email: bschatz@ncsa.uiuc.edu
http://www.grainger.uiuc.edu/dli/

ABSTRACT

The Net of the Twenty-First Century will have a very different character than at present, which will see the beginnings of enabling ordinary people to solve their information problems. The past ten years have seen browsing hit the masses, so that document fetching is now standard. The next ten years will see search hit the masses, so that distributed repositories will become standard. This trend is already well underway with the federal R&D program in Digital Libraries. But to be ready for the world of 2005, a plan for major R&D in Analysis Environments must be implemented, so that it will become possible for information correlation to become standard in the years beyond.

The Interspace is a vision of what the Internet will become, where the users cross-correlate information in multiple ways from multiple sources. In architecture, the Interspace is an applications environment for interconnecting spaces for manipulating information, much as the Internet is a protocol environment for interconnecting networks for transmitting data. Effectively implementing this environment will require building operating systems incorporating both computer science research on distributed objects and information science research on semantic retrieval. To realize this new technology, a federal R&D strategy will be necessary to support basic research, prototype development, and testbed deployment with the goal of demonstrating feasibility of new analysis environments in the laboratory and evaluating viability of new information applications in the field with real users and real information.

Keywords:

information retrieval, digital libraries, network information systems, analysis environments, federal R&D policy, Interspace, the Net

(訳者注1: 本稿は著者の了解を得て下記の記事を訳したものである. White Paper for "America in the Age of Information: Forum on Federal Information and Communications R&D", Committee on Information and Communications (CIC) , National Science and Technology Council, http://www.hpcc.gov/cic/forum/CIC_Cover.html, July 6-7, 1995, National Library of Medicine)

(訳者注2:the Netはインターネット(the Internet)ないしは世界規模のネットワークの ことを意味する.本稿ではthe Netが多くの場合,将来の世界規模のネットワークを意図 して用いられている.そのため,本稿では現在のインターネットとは区別するため,特に 必要と感じたところについてはthe Netと記し,その他についてはネットワークと記して いる.従って,本稿では「ネットワーク」という語は,多くの場合現在から将来に渡る世 界規模のネットワークのこと意味する.)


ネットワークの進化

 この節では2000年以降の実際的な情報技術の進化を概説する.一つの見方として,情報 技術は,現在は接続,近未来は対話的利用,そして21世紀には情報分析へと進化していく と考えられる[1].(図1参照.http://csl.ncsa.uiuc.edu/ISWWW/netevolution.html

 インターネットが提供する接続機能は現在広く受け入れられている.ARPANETのために 作られた技術はおよそ30年も前のものであるが,大多数の利用者にとって,ファイルにア クセスし取り寄せるということが可能になったのはここ10年ほどの間のことである.広く 知られているGopherやMosaic/WWWは,世界中の何百万もの人々がネットワークを利用して 情報へアクセスすることが可能であることを示した.一方,ネットワーク上で提供されて はいるが十分には組織化されていない大量の情報を容易に利用できるようになったことか ら新たな問題が明らかになってきた.

 多くの利用者が次に受け入れるのは対話的利用の機能であろう.商用の情報検索システ ムは30年近くにわたって利用されてきてはいるが,情報の組織化が情報基盤にとって重大 な問題であると認められるほどオンライン(検索の)利用者数が増えてきたのはここ数年 のことである.効率良く検索し表示することができるようにコレクションを組織化する技 術を「分散リポジトリ」と呼ぶことにしよう.国家情報基盤を構築するために必要な効率 とサイズを満たすように分散リポジトリ技術を実現することは,おそらく現在のディジタ ル図書館開発計画の中心的な問題であると考えられる.我々のディジタル図書館の研究開 発プログラムや他の計画の成果は2000年までにネットワーク上を伝わり,より広範に利用 されるようになるであろう.その次に現われる重要な問題は,個々に組織化され分散して 蓄積された情報のコレクションのための簡単な検索技術であろう.

 21世紀には,多くの利用者が情報の分析機能を利用することになるであろう.「情報分 析環境」は,ネットワーク上に広がる多数の情報源から得られる情報の間の様々な相互関 係に関するするサービスを提供する.分析環境の基本的な機能は,ネットワーク上での検 索パスと検索対象への道案内をすることによって利用者の情報アクセスに関する問題を解 決することである.これはネットワーク上でのブラウジングのための情報源へのアクセス やネットワーク上の個々のリポジトリ上での検索の組み合わせというよりは,情報を探し ながら情報源から情報源へと渡り歩くものであり,大きな図書館における参考サービスに 似たものである.

 分析機能を提供するには,インターネットの機能をInterspaceの水準まで高めなければ ならない.インターネットはネットワーク上でのデータ転送機能しか提供していない.そ の基本的な機能はマシン間でファイル転送を行うためにネットワーク間を接続することと 考えられているようである.一方,Interspaceの基本的な目的はネットワーク上で知識を 扱うための透明な環境を提供することである.そのため,その基本機能は情報のリポジト リ間にまたがって相互関連する情報を扱うために情報空間を互いにつなぎ合わせることで ある.

 ネットワーク(the Net)は物理的なファイルとマシンによって構成される情報ネットワ ークから,論理的なオブジェクトの間の論理的な関係によって構成される情報空間へと変 化しているところである.情報空間におけるユーザモデルは(情報オブジェクトの)グル ープにまたがるオブジェクト間の関連づけを扱わなければならない.したがって,あるユ ーザが他のユーザのリポジトリと関係付けをしたり,またあるユーザコミュニティが他の ユーザコミュニティのリポジトリに関連づけることもある.それぞれのリポジトリではオ ブジェクトのグループ化とそれらの間の関連づけがなされており,それらは「(情報)空 間」と呼ぶことができる.そのためInterspaceは異なる多数の「(情報)空間」を結び付 けることによって生み出される.

 2005年に向けた10年間の技術予測は以下のようなものである.ネットワークに物理的に 高速接続された10億台ものマシンがある.これらのマシンには1台あたり100万もの論理的 なオブジェクトがあり,これらはそれぞれの場所で情報空間と論理的なつながりを持って いる.ネットワーク上で働くオブジェクト指向のオペレーティングシステムが存在してお り,それは分散したリポジトリ間の通信プロトコルとしてディジタルオブジェクトを取り 扱う.これは,その管理下にあるいずれのマシンにおいて利用者の要求を満たす必要が出 てきたとしても,オブジェクト上での操作が安全かつ正確に行われることを保証する相互 利用のための変換機能を持つものである.

 このような汎用的なオペレーティングシステムの上に汎用的な応用環境が築き上げられ る.それはオブジェクト間の相互関連による情報分析機能が提供される分析環境となる. 分析環境はリポジトリ上での検索と相互関連する情報間を結び付けるためのミドルウェア とプロトコルを提供する.分散オブジェクトを格納した10億ものリポジトリからなる世界 を扱うには,分析環境の基本的な機能として自動索引と概念マッチングが含まれねばなら ない.こうした機能の実現によって現在の大規模なサービスを越えた水準の情報検索機能 が提供されるであろう.しかしながら,現在ではスーパーコンピュータでのみ実現されて いるような水準の処理が要求されることになるであろう.したがって,Interspaceは通信 と計算の統合あるいはNII(National Information Infrastructure)の機能を提供するため のHPCC(High Performance Computing and Communications)の利用と見なせるであろう.

The Interspace

 Interspaceは情報と通信の研究開発に関する将来の応用の枠組みを与えるものであり, 将来の情報基盤の技術的課題の中心は情報分析に向くであろうと考えている.

 インターネットがInterspaceへと進化するとき,ユーザとの対話の基本的なモデルは変 わってしまっているであろう.物理的なマシンとビットの並びとしてのファイルは透明に なって消え,情報オブジェクトやコレクションの分類によって置き換えられているであろ う.ネットワークの典型的な利用形態は,厳密な質問に対する正確な答えをデータベース から得るといったものというよりは,より大きな満足を得るために多数の情報源へのアク セスを道案内してくれる図書館の参考サービスのようなものになるであろう.多様な利用 者による多様な水準でのコレクションの分類が,Interspaceにおける情報空間の相互接続 のための意味的な支えとして必要となるであろう.

 現在の出版において,ネットワーク(the Net)上で提供される便利な道具が利用されて いるのは出版サイクルのほんの一部でしかない.出版の過程は次のように進んでいくとと らえることができる.著者(著作物を生成する)から出版者(質的なコントロールを行う )へ,次にindexer(著作物の分類を行う),図書館(利用者をコレクションへ適切に導 く),そして利用者(要求を発する)へと続いている.この過程の各段階は近い将来ひと つにまとまっていくであろう.たとえば,著者が直接ネットワークに向かって出版するこ とが可能となるであろう.利用者個人が自分自身のリポジトリと他のリポジトリへの参照 をコレクションとして持つことが可能となるであろう.ある人がネットワーク上で所望の 情報へのパスを見つけたとき,そのパスを新たな情報オブジェクトとして蓄えるであろう ,そしてそうした情報オブジェクトは利用者からindexer,著者へと張り巡らされること になる.

 ネットワーク(the Net)における索引付けはInerspaceにおける重要な付加情報となるで あろう.索引はある種類のコレクション上での効率的な検索を可能にするオブジェクトの グループの分類である.現在,クライアントやサーバそれにゲートウェイはあるが索引は 非常に少ない.多様なレベルの分類は参考業務を行う図書館員にとって実際の図書館の中 で利用者を導くために必要なものである.現在のところ大組織によって作られ維持されて いる大きな索引には,図書,雑誌,美術品,映画,音楽など全ての出版媒体をカバーする 多様な種類のオブジェクトが含まれている.さらに,情報源(たとえば雑誌),件名(た とえば,工学)等のカテゴリーをカバーする高水準の(あるいはメタレベルの)索引が数 多くある.ネットワークにおいてはこうした公式のコレクションのための索引は,次のよ うな非公式に作られるコレクションによって補完されなければならない.たとえば,非公 式に作られるコレクションには,ある種の社会(たとえば特定の組織を研究している分子 生物学の研究者),グループ(たとえば,卵の受精の研究室)や個人(たとえば,自分自 身の部屋にある部分的なコレクション)などがある.

 索引付けはInterspaceにとってミドルウェアを作る上での鍵である.利用者はいくつか のリポジトリから得た資料を再分類し再グループ化し,そうして作り出した情報オブジェ クトを価値あるものとして蓄積することに多くの時間を費やしている.大組織から小さな クラブに至る集団も個人も,ネットワーク上の情報を特化した目的に利用するために細か な分類を行う過程でA&I(抄録作成と索引付けを意味する図書館用語)のために多くの努 力を払っている.こうしたグループ化とアクセスパスの記録を直接伴う索引付け処理はInterspace の基本的な機能に含まれている.将来のネットワークにおいてこのような道具が基本であ るということを提案することはVannevar BushのMemexに関する主要な論文の50周年である 今年には相応しいものであり,また記録された情報の中での生活の方法として先駆的なも のである.

 Interspaceにおける情報検索は情報の分類のための基本的な操作の付加的機能を与える .すなわち,Interspaceでは,「外部」世界からのデータは情報オブジェクトに変換され ,情報オブジェクトの相互のつながりが情報空間を作り出す.異なる情報空間を相互につ なぐことによってInterspaceの基礎を作りあげる.ある情報空間に含まれるオブジェクト やそのグループの上には,それらを異なる方法で索引付ける概念や分類が築かれる.そこ では,自動,半自動,そして人手による索引が最も基本的な水準で結び付けられる.概念 と索引は相互に結び付けられ,オブジェクトとコレクションの上に別の空間を作り上げる .これは情報空間というよりは知識空間と呼ぶべきものであろう.こうして,語彙を表す 語をいくつかの対象領域にまたがって写像するというような機能を含めて,個々の検索リ ポジトリよりはかなり深いレベルで意味的な検索が可能になる.

 Interspaceにおける情報分析はネットワーク環境を利用している間に現われる副次効果 ととらえることができる.一般に,利用者は興味を従って多くの情報源を通って情報を求 めてゆく.Interspaceでは,あるリポジトリから他のリポジトリへと語彙を適切に写像し ながらシステムは利用者が通った経路をたどっていく.こうして作られるグラフは,従来 の単語マッチングによる情報検索よりも,利用者の心の中の概念を情報の世界の中に表さ れた概念にマッチさせるものと見ることができる.

 小説の中では,あなたの心や頭の中に広がるリンクがいっぱいあり,それがサーバース ペースにつながり,あなたは情報に囲まれている−あなたがかんがえるものがサイバース ペースにつながり,またサイバースペースから情報を受け取る.Interspaceにおける情報 分析はこのような高い水準で意味を扱うことができるようにはならないであろう.また予 測可能な未来における情報の量と分類の水準は,ユーザインタフェースとは無関係に,身 の回りにデータが何でもそろっていると感じるまでにはならないであろう.しかしながら ,集中的に10年間研究することによってのみ,一般の利用者がネットワーク上で興味ある 情報を見つけだすのに十分な能力を持ったシステムを開発することができると考えられる .

情報分析環境

 情報分析環境は戦略的に焦点をあてるべき科学技術分野の枠組みを与える.新しい情報 技術において第一に注目されるべき問題は,情報を扱うための支援機能を持つオペレーテ ィングシステムであろう.ここで提案する点は,オペレーティングシステムが従来計算機 科学の基盤的研究として進められてきたのと同じように,情報科学の研究を基盤に組み入 れることである.(こうしたオペレーティングシステムの上に作られる)情報分析環境は 新しいInterspaceシステムの核となるものである.

 情報の意味的相互関連性を扱えるようになるまで情報基盤の能力を向上させるには,今 日のオペレーティングシステムと同じように,応用環境のための様々な情報支援機能を持 つ環境を,利用者にとって標準的に用意されるプラットホームとして準備することが必要 である.こうしたプラットホームは従来のネットワーク指向のオペレーティングシステム の上に作ることができるであろう.さらに,応用システム環境の上に多様なユーザインタ フェースが作られるであろう.ユーザインタフェースと応用システムの環境に加えて情報 と情報間の関係からなる空間がInterspaceを形成することになる.

 情報分析環境のためのオペレーティングシステムはインターネット上の分散オブジェク トを扱うことができる.動的にオブジェクトの型変換を行うこと(Dynamic Coercion)で オブジェクトの相互利用のためのプロトコルを形作ることができる.すなわち,ローカル には適切なクラスが見つからないオブジェクトが検索されてきた場合,そのクラスをネッ トワーク上で見つけロードする,あるいは,オブジェクト自身をローカルに準備されてい るクラスに合うように適切な形に変換(coerce)する.いくつかのオブジェクトから構成さ れる複合オブジェクトについては複合オブジェクトを一つのオブジェクトとして適切に表 示する技法を利用できる.大規模な(属性の)継承機能に基づいて作られるオブジェクト をネットワーク上を転送することのできるオブジェクト(first-class object)とするた めのwrapperを提供する.CORBAのような標準規格として認められているものと同様に,SUN のJavaやMicrosoftのOLEといった既存の製品があるので,オペレーティングシステムの層 を実現する際に必要となる共通に利用できるオブジェクトの実現方法に関する要求はあま りない.

 応用環境は相互に関連づけられたオブジェクトからなる情報空間を提供する.Interspace を実現するには,一つの空間内,また空間間ともに(オブジェクト間の)リンクを保持し なければならない.こうしたオブジェクト間の関係を表すリンクをたどって道筋をみつけ ることによって情報へのアクセスパスを作り出す.これは個人やグループで仕事を進める コミュニティにとって問題解決の論拠となる文脈(context)や問題解決の構造を理解する ための記録となり得る.注釈(annotation)のような従来の情報のグループ化技法も情報へ のアクセスパスを見つける上で利用できる.オブジェクト自身はオペレーティングシステ ムによって扱われる.実際,オブジェクトはコレクションとして物理的に収集され,オブ ジェクトの内容や記述に基づく基本的な検索が行えるようリポジトリソフトウェアによっ て索引付けされる.

 洗練された水準の索引が情報分析環境によって提供され,またこれは洗練された水準の 検索に利用することができる.(情報源への)一群のパスやそれらの集合といったグルー プ化の方法は,仮想的な情報オブジェクトのコレクションやコレクションのコレクション を形作る.こうしたコレクションは組み込まれた多様な技法に基づいて索引付けられ,検 索のために利用されるメタレベルのリポジトリとして利用される.

 情報分析環境に関して特に研究開発が必要とされるのは自動および半自動索引技術の設 計と評価である.10億もの情報オブジェクトのリポジトリ(さらに,より多くの数のメタ レベルのリポジトリ)がある世界では,従来の単語のマッチングに基づく自動索引技術は 不適当である.多数のより意味的な技術が必要とされる.最も有望な技術の一つに語の共 起性に基づく概念スペースのアプローチがある[2].この方法では単語同士が同時に現わ れる頻度に関するグラフが生成される.これはシソーラス風の索引に直接利用することが でき,オブジェクトのリポジトリを検索する際に利用すべき関連語を示してくれる.また ,これは各オブジェクトがどのようなトピックをカバーしているのかを識別するための概 念辞書として共起マトリックスを用いることで間接的に自動化索引として利用することが できる.分野毎の専門家でありかつ分類に関してはアマチュアである人によって管理され ることになるメタレベルのリポジトリに関しては,特に,概念空間から生成される概念辞 書がオブジェクトの索引付けのための語を示すために必須であろう.

 多様な種類の情報を分析できることが情報分析環境の中心的な機能である.任意の領域 間での類似性を自動的に照合することは,おそらく,照合における意味的な深さにかかわ らず困難であろうが,予測可能な未来において情報分析のためのかなりの支援は可能であ ると考えられる.全てのオブジェクトとコレクションが適切に索引付けられることによっ てある種の支援は行える.また,たとえばアクセスパスの記録といったもののように,個 々のオブジェクトやリポジトリではなく利用者による操作に対してなされるグループ化に よる支援も可能であろう.しかし,Interspaceに組み込まれる自動索引機能を利用するこ とで情報分析支援は大きく進歩するであろう.

 情報分析環境の研究開発のために必要なものは新しい索引付け技術に基づく新しい情報 検索技術の設計と評価である.10億ものリポジトリからなる世界では,1回の検索要求に 対して100万もの索引が関連することになるであろう.これに対処することはたしかによ り高速なマシンを必要とする,すなわち,現在のスーパーコンピュータ上での実験が10年 後のパーソナルコンピュータ上の典型的な仕事を実証的に説明するために必要になる.し かしながら,基本的には,より洗練された照合技法が必要とされる.繰り返しになるが, 最も有望な方法の一つが概念空間のアプローチである.もし組み込みの自動化索引がリポ ジトリ内の全てのオブジェクトの共起グラフを生成するのであれば,グラフマッチングを 利用することも可能であろう.(100万ものオブジェクトの概念空間を計算するには現在 ではスーパコンピュータが必要である.)利用者自身のリポジトリに関する概念グラフと 関連する他のリポジトリのグラフと共通部分を見つける(intersect)ことができる.グラ フ同士の共通部分を取り出すことでより意味的な検索が可能になり,また語彙を自動的に 交換することもある程度可能になる.このように,この方法は複数の領域で情報間の相互 関連を自動的に求める方法である.

実現戦略

 Interspaceを実現することによって情報と通信技術に関する国家的な研究開発の実現戦 略の枠組みができる.10年に渡る計画を考えてみると,そこでは基礎的研究とそれに続く プロトタイプ作成,さらにテストベッドの実地利用が含まれることになるであろう.こう した技術の開発においては,利用者による大規模な試用なしにシステムの評価はできない ので,研究開発過程において実地利用テストの段階をなくすことはできない,またこのこ とは全ての段階でほとんど全ての情報源が利用できねばならないことを意味する.

 たとえば,今からスタートする5年間のプロジェクトを考えた場合,はじめの2年間は計 画作りであり,次の2年間はプロトタイプ作り,そして最終年に小さなテストベッドを実 地利用することになる.もし今から2-3年の間にプロジェクトをスタートするとすれば技 術的には,はじめの計画段階を圧縮できるくらい成熟しているであろうし,そして最終的 に作られるテストベッドの規模も大きくできるであろう.すなわち,分析技術に関する国 家的な構想によって実際の利用者と情報を対象とする大規模なテストベッドを利用した技 術移転と社会科学的評価が可能になるであろう.

 現在のディジタル図書館構想はそうした新しい構想のモデルであろう.しかしながら, 最終的な目標は,単一のリポジトリを作るというのではなく相互に関連するいくつものリ ポジトリを作ることであるため,プロジェクトの規模はより大きくなる必要があろう.そ れによって利用性はより洗練され,コレクションはより統合化されるであろう.実際的な 利用において分析機能の有用性を十分に示すには,より多くの開発の助成,特に実地利用 の助成が必要である.

 新しい情報分析機能を実現するには,異なる優れた技術を持ついくつかのプロジェクト と社会科学的観点が必要であろう.これらのいくつかに関しては科学分野の利用者にとっ ての技術的対象領域をカバーすればよいであろう.たとえば,生物学分野の情報分析環境 の場合(分子生物学分析の場合),構造化されない大量なデータ間の相互関連性を強調す る必要がある.科学分野の場合(有機科学分析の場合),構造化された大量のデータ間の 相互関連性が問題である.物理学分野の場合(電波天文学の場合),計算結果のデータ間 の関連性が問題である.こうしたもの以外の場合,一般利用者にとって問題となる一般的 な対象分野をカバーしなければならない.たとえば,地域情報の場合(新聞社の資料室や 国勢調査のデータのような場合),地域社会の歴史的なデータの相互関連性に重きをおく であろう.地域のエコロジー情報の場合(たとえば,地下室に水が溢れ込むことや居住動 物への影響を予測するための家屋や通りのモデルのように),個人のデータやシミュレー ションの相互関連性に重きを置くであろう.地域社会の情報の場合(掲示板,広告,公共 交通機関などのように),動的な地域データの相互関連性に重きをおくであろう.

 こうしたプロジェクトの予算規模は,プロジェクトあたり1年に200万ドル,ないしは5 年(以上)あたり1000万ドルと考えられる.したがって,分析環境構想は異なる分野の5 プロジェクトに助成をだすことで総額5000万ドルとなる.

参考文献

[1] B. Schatz and J. Hardin (1994) NCSA Mosaic and the World-Wide Web: Global Hypermedia Protocols for the Internet, Science 265: 895-901 (12 Aug). invited lead article.

[2] H. Chen, T. Yim, D. Fye, and B. Schatz (1995) Automatic Thesaurus Generation for an Electronic Community System, Journal of the American Society for Information Science 46(3): 175-193. see also H. Chen, ..., B. Schatz; A Concept Space Approach to Addressing the Vocabulary Problem in Scientific Information Retrieval: An Experiment on the Worm Community System, JASIS in review.

(訳者注:著者によるInterspaceプロジェクトの現在の状況は下記のURLで見ることがで きる.)

http://interspace.grainger.uiuc.edu.