MAP09: スパミングと都市の伝説 パトリック・クリスペン 関口礼子・高橋直彦 訳 さて、ございますのは、卵とベーコン;卵とソーセージとベーコン;卵 とスパム;ベーコンとスパム;卵とベーコンとソーセージとスパム;ス パムとベーコンとソーセージとスパム;スパムと卵とスパムとスパムと ベーコンとスパム;スパムとスパムとスパムと卵とスパム;スパムとス パムとスパムとスパムとスパムとスパムとベークドビーンとスパムとス パムとスパムとスパム;それとも、ロブスターテルミドール小えびつき、 モルネソース、ショーロのパテ、ブランディ、フライドエッグをのせた スパムそえでございます。(訳注1)               −−Monty Python, Flying Circus 各種のニュースグループの一覧表やアクセス可能な LISTSERV の一覧表を手 に入れることは、可能であり、簡単ななことですらあります。頭を悩まさな くとも、その一覧表を、これらのグループの一人ひとりの人に同じメッセー ジを送り出すプログラムに変えることができます。 そうすることを、上で引用した Monty Python の描写にちなんで”スパミン グ"と呼んでいます。 昨年、「成功した」3種類のこうしたメイリングがあらわれました:ある投 稿者は、世界の終末も近いとやりました;またある人は、いわゆる「Green Card Lottery(グリーンカード抽選)」というメッセージで自分の法律事務所 の宣伝に使いました。もう一つの「MAKE.MONEY.FAST (早くお金を稼ごう)」 とラベルを付けたものは、昔のチェーンレター(訳注 不幸の手紙のような もの)の Usenet 版でした。 以上3つのうちでもっとも注目を集めたのは、グリーンカード抽選というス パムでした(1)。Washington Post 紙によれば、問題の法律事務所は、イ ンターネットは、「顧客になる潜在性を持つ人をねらいうちするのに最も理 想的で、低コストで、完全に合法的方法である」と考えています。 けれども多くの人々は、違った考えを持っていました。まず第一に、インタ ーネットは、商業ビジネスを行うには間違った場であると考えていました。 Usenet newsgroup や LISTSERV の綱領の多くは、ビジネスをする情報提供 を特に項目を挙げて禁じています。それを許している数少ないものも、ビジ ネスではなく、個人的な売買に限っています。インターネットは、ARPAnet として設立されて以来、長らく非商業主義の伝統を持ってきています。 第二に、ネットは無料ではありません。ある人気のあるニュースリーダー "trn" は、あなたに投稿を許す前に、以下のメッセージを示しています:    このプログラムは、何千というマシンを通して文明化された人々へニ ュース記事を送っています。あなたのメッセージは、あらゆる場所へ 送るのに、何千とは言わないまでも、何百ドルもの費用がかかるので す。今あなたがしようとしていることが何なのか知っておかなければ なりません。 それでもこれをするのは必要なことだと考えますか。 スパマーたちは、6000以上のグループに投稿したといわれているので、 誰かのお金を相当量消費したということは確かです。 最後に、あるトピックについて議論するべく集まっている人々は、グループ の綱領以外の事柄を議論する人が現れると、いらいらしてきます。彼らは、 しばしば、そのニュースグループ自体に不満の投稿をし、投稿渋滞を増して しまいます。 スパムは、一般的には双方向性のないことに注意して下さい。つまりあらゆ るニュースのホストは、受け取り、処理し、各ニュースグループ宛のスパム の一つひとつのコピーとして、その読者が利用できるようににするわけです。 双方向的に使用している「礼儀正しい」スパマーがいて、事柄をいっそう悪 くするということももちろんありえます。最近のあるスパムにおいて、スパ ムが、あらゆる種類の無関係のニュースグループへ送られただけでなく、怒 りの応答までもが無関係のニュースグループへ送られてしまったという例が あります! (応答する人が、投稿する前に「To:」とか「Cc」の欄を読んで いないことに責任があります。) スパムを見たらどうすべきか: まず、第一に、「ぜったいに」そのグループに返事を出してはいけません。 スパマーはそれを読まないでしょう。彼は、語ることに興味があっても、聞 くことには興味がないからです。そして、彼は、リストのメンバーではなく、 定期的な読者でもありません。あなたの怒りの投稿は、グループの他のメン バーを困らせるだけであって、スパマーには、何の影響も与えません。 第二に、もしも時間が十分にあれば、私の第一の忠告を無視したメンバーの 反響を読むのもいいでしょう。たとえば、comp.os.vxworks で一人の (ち ょっと愚かな)メンバーが、(世界の終末も近いというスパムにリプライし て、) 「これは、宗教問題を論ずるニュースグループではないぞ!」と投稿 しました。古顔が答えました「それはテーマによる」。;) (これは、ウイン クしているスマイリーです。) 第三に、そして、もっと時間のある人は、投稿者に対して、彼自身のメール ボックスへ返事を出すのもいいでしょう。決して満足は得られないとは思い ますが。スパマーはヒットエンドランをすることがよくあります。みなさん が彼に向けて彼らを非難する抗議の反応を返す前に、彼らは自分のアカウン トを閉めてしまっています。(あるいは、サイトの管理者が機敏なら、管理 者によって彼らのアカウントは閉められてしまっているでしょう。) 第四に、もしもあなたがスパマーにたいしてもっと怒っているのなら、彼の サイトの管理者に連絡するという方法もあります。もし、スパマーが clown@circus.com であるならば、その管理者は postmaster@circus.com です。 第五に、これは、あなたがあなたのサイトの管理者によって排除されること になるかもしれない、ネットの濫用なのですが、違反者にはメールの爆弾を 送りつけたくなるかもしれません。つまり、彼の所属するサイトあるいは彼 のアカウントが壊れてしまうまで、膨大な量のEメールを送るのです。その マシン上の一人の人に許容料以上の大量のメールを送りつけて、マシンを破 壊させ、そのすべてのユーザーをアクセス不能にすることも完全に可能なこ となのです。同じことがメールを処理するゲイトウェイで起こる可能性もあ ります。 私がするのは、メール綱領違反者たちを、マンハッタンの電話帳と、*考え る*ことです。ポストスクリプトのです。私は自分がネットを濫用するので はなく、その考えを楽しんでいます。あなたも、世界にスパムする力をお持 ちですし、人々(たいてい無罪の人です)にメール爆弾を浴びせる力もお持 ちです。あなたもまた、銃を買って、人々を銃撃する力をお持ちです。だか らといって、そうしなければならないというわけではないのです。 都市の伝説(UL): もう少し規模の小さい−少なくとも私の考えでは−スパミングの例に、死ぬ ことを単に拒絶している都市の伝説があります。 Craig Shergold をとりま く話が最もよい例です。(ところでこれは本当にあった都市の伝説です。) 「かつて Craig Shergold という7歳の少年がいました。彼は、脳腫瘍に冒 されて、もうおそらく治ることのないだろうと診断されていました。死の床 にあって、彼は、友達から葉書がもらえさえすれば、と望みました。地方紙 が、この涙をさそう話を取り上げました。まもなく、少年の願いは変わって いました:すなわち葉書の収集量で、 Guiness Book of World Records(ギ ネスブック)に載りたいと。このことが、世界中に広まりました。何百万と いう人々が、彼に葉書を出したのです。 奇跡的に少年は生きました。あるアメリカの億万長者は、彼の腫瘍を取り去 る手術のために、合衆国へつれて来さえしたのでした。そして、彼の夢は、 彼の描いた荒唐無稽な夢以上に、引き続いたのです。世界記録のギネスブッ クを更新しました。 しかし、Craig が10代へと成長するにつれて、彼の夢は、彼の住むロンド ンのはずれの小さな町の郵便局にとって、悪夢となりつつありました。 Craig 自身と同様に、葉書がほしいという彼の願いも死ぬのを拒絶し、毎年 何百万枚もの葉書が郵便局に殺到したのです。送られるのがゆるやかになっ たようにみえると、誰か別の人が、みなが Craig に送るようにと求める新 しい呼びかけを始めるのでした。葉書とか(あるいは時候のあいさつのカー ドとか、ビジネスのあいさつのカードとかを 。 Craig の手紙は、いつの間 にか、自分自身の命を得て、突然変異を起こしてしまっていたのでした。) 親愛なる大司教様でさえ、止めさせることはできなかったのです。」(2) インターネット周辺に出没している、Craig の話の現代版は、ジョージア州 アトランタの Make A Wish 財団にカードを送ろうというものです。どうか カードを送らないでください。Make A Wish 財団は、末期的病状にある子ど もたちの夢をかなえるための財団ですが、面倒をみなければならないことが 沢山あるのです。 インターネット周辺で進行中の、他の、都市の伝説に、ギャングが夜、ヘッ ドライトを消して走行して、ハイビームのヘッドライトで彼らを「照らした」 者をだれかれとなく撃つという話や、CD−ITといわれるウィルスがあっ て、愚かな人々のハードドライブを喰う、というようなのが存在します。 「ヘッドライトを消した車」の話はひょっとすると真実かもしれませんが、 シカゴ、ニューヨーク市、ロスアンジェルスの警察はすべて、そんな事実は ない、と電話で言っています(私は本当に電話をかけたんですよ)。 CD−ITの話は、本当のことですが、もう4年も昔のことです。 インターネット・ディスカッショングループ存続のための第一のルールを、 私は、みなさんと共有しておきたいのです:すなわち、ディスカッショング ループがディスカッションするのを目的として作られたトピックに関係する ことのみを投稿すること。 Craig Shergold の話も、こうした「関係する投 稿を」というルールを人々が守ってさえいれば、何年も前に、穏やかな死を 遂げたはずなのです。 明日:インターネットのセキュリティ 宿題: 1) 都市の伝説に、本当に関心があるならば、調べてみたらよい Usenet のニュースグループがあります (alt.folklore.urban)。 2) フレイム(非難攻撃)戦争がどんなものか気のきいた例を見たければ、    比較的おとなしい Usenet のグループで起こったのを、わたしのおと    うさんが最近記録にとってあります。そのファイルは、今、University    of Alabama の LISTSERV のファイルに FLAME WAR という名前で、    収めてあります。 このファイルは、GET するのは自由ですので、GET コマンドの復習を してください。(MAP02: LISRSERV ファイルサーバコマンド を見て ください。) もっと情報がほしければ: The November/December 1994 edition of Internet World 誌の19 94年11月・12月号に、 Usenet についてよい記事がいくつか載 っています。この雑誌は、たいていの新聞スタンドで入手できます。 情報源: (1) 1994年6月2日、alt.internet.services に投稿された    "Green Card Lottery -- The Full Story" より (2) "EFF's Guide to the Internet" より、許可を得て転載。 訳注1 spam とは、spiced ham の略で、アメリカの会社のこまぎれ缶詰肉 の商品名である。至る所で料理に使われている。 Roadmap 原作著作権所有者   (c) 1994 Patrick Douglas Crispen                PCRISPE1@UA1VM.UA.EDU 翻訳者            関口礼子                sekiguch@ulis.ac.jp                高橋直彦                y-life@po.iijnet.or.jp Roadmap Lessons 日本語版著作権所有者     (c) 1995 Reiko Sekiguchi                sekiguch@ulis.ac.jp 本稿は、1995年3月19日、パトリック・クリスペン氏から関口が翻訳・ 配布の許可をいただいて、翻訳・配布しているものです。